タスクを投げるな、約束をしよう
仕事がスルスル進む人と、なぜかいつも止まってしまう人がいます。
自分はこれを「仕事の推進力」の差だと思っていて、ずっと気になっています。
スキルの差でも、熱量の差でも、たまたまでもない。じゃあ、なんなのか。
今回はそのうちのひとつ、ほんの少しの違いについて書いてみます。
タスクを投げて、終わりにしていないか
クライアントワークをしていると、顧客や関係者に動いてもらわないと先に進めない場面がよくあります。資料を確認してもらう、意思決定してもらう、情報を出してもらう。
そういうとき、「ではご確認よろしくお願いします!」とタスクを投げて終わりにしてしまう。
しばらくして「〇〇の件、どういう状況ですか?」とリマインドする。返事がこない。あるいは「やっておきます!」と返ってきて、そのまま動かない。
これを何回か繰り返しているうちに時期を逃して、気づけば話そのものが立ち消えになっている。仕事の依頼をもらう側なら、案件ごと消えてしまいます。
しかも、これが高い確率で起きる人がいます。やっぱり、たまたまではないのです。
約束しないと、優先順位にすら入らない
相手が対応してくれないと、「後回しにされているんだな」と思いがちです。
でも実際は、もっと手前で止まっていることが多い。
優先順位の中にすら入っていないのです。
相手にも自分の仕事があって、自分の優先順位があります。そこへ「よろしくお願いします」とタスクだけ渡されても、いつまでに、どれくらいやればいいのかがわからない。わからないものは並べようがないので、とりあえず脇に置かれます。悪気はまったくありません。
ボールは誰にも拾われないまま、床に落ちています。
「どういう状況ですか?」とリマインドしても、この構造は変わりません。状況を教えてほしいと頼んでいるだけで、次に誰がなにをするのかは、なにも決まっていないからです。
だから、約束をする
違いは、ほんの少しだけです。
タスクを投げるのをやめて、約束をする。
- いつまでに
- 誰が
- なにをするのか
これをお互いに決めます。「ご確認お願いします」で止めずに、次の約束まで話します。たとえば、こんなやりとりです。
「金曜までにA案とB案のどちらにするか決めていただけますか? 月曜にこちらで見積もりを出します」
「金曜は難しいですが、月曜の午前なら」
「では、月曜の午前に決めていただいて、こちらは火曜に見積もりを出します」
期限をつけてお願いするだけでは、まだ約束ではありません。お互いに「それでいきましょう」と決めるところまでやります。相手になにをしてもらうかだけでなく、自分が次になにをするかも一緒に約束します。
おもしろいのは、約束しようとすると、相手が考えはじめることです。「金曜は難しいですが、月曜の午前なら」という返事は、相手が自分の状況を思い浮かべたからこそ出てきた言葉です。
約束しようとすることで、相手は自分の状況を思い浮かべて、優先順位を決めます。
ここではじめて、仕事が相手の優先順位に入ります。お互いにそれぞれの仕事と優先順位があるからこそ、約束をするのです。
約束を並べて、ステップにしてしまう
自分がよくやるのは、約束をひとつで終わらせずに、ゴールまでのステップとして並べてしまうことです。たとえばこんな感じです。
- 10/01(木)自分:打ち合わせにてシステム構成を説明し、構成図を提出する(本日)
- 10/05(月)相手:構成図についてフィードバックをいただく
- 10/06(火)自分:フィードバック内容を反映して申請を提出する
- 10/09(金)相手:申請に基づいて環境構築をし、引き渡す
これを打ち合わせの最後に画面に出して、「この流れで進めたいんですが、どうですか?」と聞きます。
ステップを並べると、このあと仕事がどう進んでいくのか、全体のイメージが共有されます。
すると相手にも、「こう進めたいから、このタスクをこの日までにお願いされているんだな」と伝わります。単に「5日までにフィードバックください」と言われるのとは、受け取り方がまるで違います。自分のフィードバックが遅れたら、6日の申請も9日の引き渡しもずれる。それが見えているからです。
そのうえで、相手は自分の仕事の優先順位に、このタスクを組み入れます。ときには「5日は厳しいので6日の午前でもいいですか?」と、その場で調整してくれることもあります。
それでいいのです。お互いの状況をふまえて決めた約束のほうが、ずっと守られやすい。
タスクをひとつ投げても、相手に見えるのはそのタスクだけ。約束を並べれば、相手に見えるのは仕事の流れ全体になります。
守られなかったら、また約束する
もちろん、約束が守られないこともあります。相手にも急な事情はあります。
でも約束があれば、相手から「すみません、月曜の午前は厳しくなってしまって、水曜でもいいですか?」と連絡が来ることが多いです。守れなかったことに相手自身が気づけるのも、約束があるからです。
連絡が来なかったとしても、責める必要はありません。もう一度約束をします。
約束し直すことは、相手に優先順位をつけ直してもらうことでもあります。
このとき、同じお願いに新しい期限をつけ直すだけでなく、進め方ごと変えてしまうこともよくあります。ひとりで確認する時間が取れないなら、「明日15分だけください。画面を見ながら一緒に決めちゃいましょう」と一緒に確認する時間をつくる。判断材料が足りないなら、先にこちらでそろえる。相手が進められる形にしてから、もう一度約束します。
おわりに
タスクを投げるか、約束をするか。ほんの少しの違いですが、積み重なると大きな差になります。
仕事を前に進める力、「仕事の推進力」のようなものは、たしかにあると思っています。スキルとも熱量とも違う、なにか。
ただ、それがなにでできているのかは、まだ言語化の途中です。今回の「約束」は、そのうちのひとつにすぎません。
これからも、少しずつ言葉にしていきたいと思います。