最近、新卒研修の講師をしたり、学生の成果発表を見に行ったり、そういう機会がたまたま重なりました。
彼らに「教える」どころか彼らから「教えてもらう」ことが多く、自分たちにできるのは「場を作る」ことだけだ、と思ったという話です。
enPiT成果発表会
縁あって、2018年度のenPiT筑波大ワークショップ成果発表会にお邪魔してきました。
2018年度 enPiT 筑波大 ワークショップ(成果発表会) - enPiT-BizSysD × 筑波大学
2019/1/17 13:00より総合研究棟B SB0110で開催。3大学14チームが参加しアジャイル開発を取り入れ、2 ...
enpit.coins.tsukuba.ac.jp
彼らは本当にすごかったです。どのチームもプロダクトづくりを9 Sprint(といっても授業の時間は3.5 hour/sprint)まわして、
- 動くプロダクトをデモすることができた
- 見つけたProblemに対して自分たちのSolutionをぶつけられていた
- インタビューを通してユーザーからのフィードバックを得ていた
- チームや仕事の進め方をハックしていた
これがどれだけすごいことなのか。中にはそのままリリースしても面白い、お金のにおいがするプロダクトがいくつかありました。
プロダクト面では、我々では考えつかない、あるいは考えてもよくないアイデアだと捨ててしまうような発想から素晴らしいプロダクトの卵がいくつもありました。実現可能性やマネタイズはもちろん重要ですが、そのことばかり考えていたらおそらく途中で捨ててしまうものを、「面白い」「作りたい」「欲しい」という純粋な気持ちを昇華させていった結果が彼らの素晴らしいプロダクトです。彼らのプロダクトを見ていて、馬田さんのこのスライドを思い出しました。
もちろん実際にビジネスにするときにはマネタイズを考えることになるのですが、それが得意な人は多いので意外と後からでもどうにかなりそうな気がします。自分自身新規事業をやってきて実感しているのは、「売上を上げる」ことよりも「ファンをつくる」ことのほうが難しいです。
チーム・プロセス面でも、 同様にどのチームも素晴らしかったです。
- スキル差ができてしまったのでモブプログラミングをやるようにした
- プロダクトの方向性に疑問を感じたので、全員で話し合ってゴールを再設定した
- ユーザーにフィードバックをもらって方針を変更した
プロフェッショナルとして仕事をしている開発チームでも、自分たちのやり方に疑問を持ってチームや仕事の進め方をハックしていくことはとても難しいことです。彼らは当然のことのように成果報告をしていました。
新卒研修
この発表会を見ていて、昨年担当した弊社の新卒研修を思い出しました。
ビジネス採用の新卒265人にエンジニア研修をすることになり、いろいろあってその研修を担当しました。この研修の中でenPiT同様にチームでプロダクト開発してもらった時も、enPiTと同じような結果になりました。
この新卒研修の話を、新卒たちと一緒に講演した資料が以下です。
2つの場に共通していたこと
この2つの場の共通点について考えてみました。enPiTに関しては、自分は成果発表を聞いたり担当講師と少し話をしただけなので、あくまで感じたことです。
子供扱いしない
どちらも講師と生徒の関係が、大人と子供のそれではなく、仕事仲間のような関係に見えました。どうしても研修や教育現場では前者のような関係になりがちで、講師が子供扱いをすると子供のように振る舞ってしまいます。
裏返すと、プロフェッショナルとして接することで彼らもそう振る舞おうとしていくのかもしれません。
「教える」のではなく「場をつくる」
新卒研修を担当した時に、どのような場を作るのか、自分自身どのようにふるまうか考えました。結論として、教育のプロではない自分が「教える」なんておこがましいので、成長できる「場をつくる」ことにフォーカスしようと決めました。研修屋でなく現場で働く自分たちが担当するからには、今の自分たちが知っている最高の現場を体験できる「場をつくる」ことしかできないな、と。
一方でenPiTでも、よくある授業のように一方的に「教える」だけでなく、成長できる「場をつくる」ことを意識されているように見えました。もちろん必要なインプットを行ったり、適切に学びを得られるようにサポートできる体制をつくっているものの、自分が知っている教育現場よりももっと実際の仕事に近い「場」になっていました。
自分が一番得してる
こんな記事を書いてみたのは、別に教育がどうのなんて崇高なことを語りたかったわけではありません。結果として、彼らから刺激を受けて、たくさん教えてもらって、一番得しているのは自分だと感じたから書いてみました。
こんなに成長の加速度が凄まじい彼らと一緒に働いたりできるようになったら今よりもっと楽しくなるだろうな、とワクワクしています。