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組織づくりや場づくりのための「OST実践ガイド」がすごくよかった

「OST実践ガイド」がすごくよかった。 個人的にOSTを運営した経験があったことのでジャケ買いをしたが、「OST実践ガイド」はOSTのHOW TO本に留まらず、OSTを通して人と人の関係性や組織のマネジメントなどにも触れられていて、組織づくりや場づくりに興味ある方にもおすすめの内容だった。

Open Space Technology

ちょっとだけ前提知識の補足をしておくと、OSTはOpen Space Technologyの略である。

1985年にハリソン・オーウェンによって提唱された。 5人から2000人といった小人数から大人数にまで一堂に会して行えるのが特徴である。参加者が課題を提案してミーティングを行う仲間を募り、課題を解決するプロジェクトを創出することができる。参加者の当事者意識や自発性を喚起するとともに、参加者の主体的な発案、対話を促す。 via オープン・スペース・テクノロジー - wikipedia

テクノロジーという名前がついているので技術的なことのように思いがちですが、実際はそうではなく簡単に言うと、OSTとは会議スタイルの1つである。 オープン・スペース・テクノロジーのユーザーガイド(英語)があって、オープンスペースの定義や基本構造から簡単な場づくりの方法も記載されているので、英語が苦手でない方はぜひオリジナルソースとして見ておいていただきたい。

Open Space World | inviting faster, easier organization – everywhere
Open Space World | inviting faster, easier organization – everywhere

www.openspaceworld.com

OST実践ガイド

まずなにより「OST実践ガイド」は翻訳本ではなく、実際にOSTによる場づくりを何度も経験されている著者のお二人による書き下ろしなのでとても読みやすかった。 本書は7章から構成されており、

  • 序章「今なぜオープン・スペース・テクノロジーなのか」
  • 第1章「リーダーが生まれてくる土壌をつくるOST」
  • 第2章「OSTを実践しよう」
  • 第3章「OSTのファシリテーションと組織マネジメントへの示唆」
  • 第4章「OSTを柔軟かつ創造的に活用する」
  • 第5章「OSTの実践事例」
  • 終章「OSTが育むリーダーシップがもたらす個人、組織、社会のあり方」
  • 付録(OSTの台本、よくあるQ&A、他ワークショップの進め方)

という構成である。 目次の通り、単なるHOW TO本の内容に留まらずOSTが組織や場に対してどのように機能するかやケーススタディまで載っていて、OSTに関するWHY-HOW-WHATが一冊に収まっている。OSTについて知りたければ間違いなくこの1冊である。 第5章の実践事例(ケーススタディ)はすべて日本の事例であり、実際の組織でどのような目的のもとでどのように準備・運営が進められてどのような成果が得られていたか紹介されているので、とても参考になった。 個人的には第3章の「OSTのファシリテーションと組織マネジメントへの示唆」が好きだ。OSTをファシリテーションする際にどのようなことを意識すべきが書かれているのだが、ここに書かれている内容はOSTという場に限らずに組織やチームをつくっていく上でも必要なことである。・・・などと読みながら思っていたら、章の中で組織マネジメントについても言及されていたので大変興味深かった。

  • 学習する組織
  • ファシリテーション
  • リーダーシップ
  • ダイアログ
  • 組織マネジメント
  • 成功循環モデル

OSTの実践にはそれほど興味がなくても、このあたりのキーワードにピンと来る人は、まずは「OST実践ガイド」を手にとってパラパラ読んでみることをおすすめする。

私にとってのOST

カンファレンス・勉強会にて

自分がはじめて海外カンファレンスに参加した時にOSTに初めて遭遇して、その盛況ぶりにとても驚いたことを覚えています。最近では日本でもRegional Scrum Gathering Tokyo、Scrum Masters Night!、JJUG CCCなどをはじめ、OSTを取り入れているカンファレンスや勉強会が増えているので、どこかで体験したことがある方も多いかもしれません。 また、Rakuten Technology Conference 2017ではUnconferenceという形で企画・運営を経験しました。

Rakuten Technology Conference 2017 Digest - YouTube この時は「エンジニアの未来会議」と題して、組織・会社・職種の壁を越えてエンジニアの未来について考えてみるということをテーマにOSTを開催しました。 OSTのファシリテーションは初めてだったので、「人が来てくれなかったらどうしよう」「盛り上がらなかったらどうしよう」などの不安を抱えながら場づくりをしました。ところがいざ始まってみると、最初から参加してくださった方、楽しそうな雰囲気につられてなんとなく見に来た方、講義形式のカンファレンスに疲れて休憩がてらふらっと立ち寄った方などどんどん人が集まってきました。参加してくださった方々に話を聞いてみると、OST初体験の方が多かったにも関わらず、場としてとても盛り上がりました。

ふりかえりにて

また、カンファレンス・勉強会以外にも、組織のふりかえりとして「シン・未来会議」という形でOSTの要素を取り入れて実施したことがある。

所属組織の未来を考えるという目的のもとに、ふりかえりとOSTを混ぜた形式で進行をした。話したいトピックのもとに集まり、グループごとにディスカッションをすると形式にし、そのままそのグループで取り上げた問題とその解決策を持ち帰って実施してもらった。 カンファレンス・勉強会でのOSTと違って、参加者は同じ組織のメンバーなので見知った顔同士とはいえ、働いている中で膝を突き合わせて自分達の未来を語る場というものはつくりにいかない限りまず生まれない。OSTの要素を取り入れることで、上下関係などを忘れてフラットに問題 vs 私達の構図でコミュニケーションすることができ、単なる問題解決ではなく語りたい未来について話し合うことで未来志向で話し合えるよい場となった。

最後に

OST自体ものすごく強力なツールであると思うが、単なるツールとしてではなく場づくりの話だと考えると世界がものすごく広がる。 カンファフェンスや会議というワンショットを考えてもよい場をつくることは難しいことなので、継続的に存在する組織でよい場をつくることは本当に大変だ。OSTが大事にしている「リーダーシップの創出」、「フラットなコミュニケーション」、「心理的安全性」、「カオスを受け入れる」というポイントは、自分が日々の組織運営の中でテーマにしていることとリンクしている。 同じように組織のマネジメントに奮闘されている人にとっても、「OST実践ガイド」は役に立つような気がしています!  

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TAKAKING22

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